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『偶然の音楽』 / ポール・オースター

偶然の音楽 ポール・オースター

本当に大好きすぎる作品。
そして、「不条理」と言えば、真っ先にこの作品を思い浮かべる。

この偶然の音楽は、ジム・ナッシュという消防士が主人公なのだが、ある日、ジャック・ポッチィという男と出会ったがために、彼の人生はとんでもない世界へ進んでいくことになる。

もう、本当に冒頭からカッコ良すぎるので、冒頭の一節を紹介したい。

「丸一年の間、彼は車を走らせ、アメリカ中を行ったり来たりしながら、金がなくなるのをまった。」

これ!
一体、何が起こっているのだ、と思わせる最高の一節だ。

この本は、とにかく小説が一つの交響曲のような、とてつもない世界を表現しているように感じられる。
そして、後半からは読み進める手が止まらなくなり、一気に読めてしまう作品。

この作品を読むと、人間というものは、きっかけさえあればどんな風にも転んでいける、のだと改めて思う。
それがいい道であれ、悪い道であれ。

最初はほんの些細の出来事。

それが、いつしかとんでもない大きな波となり、未知の世界へと誘う。

そして、多くの場合は悪い方向へと働く。
なぜなら、人間は怠惰で、楽をしたい生き物だからだ。

かのイチロー選手は、はるかに遠い場所へたどり着くには、今日小さな一歩を積み重ねることが大事、といったことを言っていたそうな。

しかし、それは人間の持つ怠惰な重力に打ち勝ってこそ成り立つ。
この法則は、裏を返せば、小さな一歩がとんでもない人生の破滅へと誘うことだってあるということなのだ。

ごく当たり前で、とても美しいささやかな日常が、実はとても大切なもの。
そんなことは誰だってきっとわかってはいるのだろう。

でも、それを強く胸を叩くように教えてくれるのが、この作品だ。

この世の全てが縮図のように詰まっている。
それが、ポール・オースターの『偶然の音楽』なのだ。

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