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『郵便局』 / チャールズ・ブコウスキー

郵便局 チャールズ・ブコウスキー

熱狂的なファンが多いと言われているアメリカの作家・チャールズ・ブコウスキー。

一方で、全然受け付けないという人も少なからずいるのではないかと思うほど、ユニークかつパワフルで、いい意味でなんじゃこりゃあ、と感じる作家です。

そんなブコウスキーが50歳にして初めて書いたのがこの「郵便局」という小説。

初期の村上春樹さんの作品が好きという方はきっとどハマりするんじゃないかとも思う作風。

ブコウスキー自身、詩を書きながら、10年以上郵便局で働いており、その実体験をもとにして書いたのが郵便局という作品。

出版社の依頼を受けたのをきっかけに、郵便局をやめてすぐに書き始め、3週間程度で書きあげた小説。それだけに、文章の勢いや躍動感がもろに感じることができるのもまた本作品の魅力。

あらすじは、ブコウスキー自身がモデルになっているヘンリー・チナスキーという男が郵便局でひたすら働いて、もうてんやわんやするというお話。

何か特別大きな事件が起きるわけでもないが、この郵便局という職場自体が今の日本社会でいうとめちゃくちゃブラックな環境。

1日12時間労働は当たり前、肉体労働で疲弊しながらも、次の日も朝早くから出勤するチナスキー。

おまけに上司も同僚もけっこう嫌な奴が多かったりして、個人的には大学生のときのアルバイトを思い出して涙してしまう。

主人公のチナスキーは、よく言えば、自分に誠実。悪く言えば、世渡りが下手くそで、我が強すぎる男。

上司にも同僚にもすぐに喧嘩を売るし、仕事も郵便の配達中に女性の家に上がり込んでサボっていたり、どうしようもないなあっていう感じもありつつ、そんなチナスキーがめちゃくちゃカッコいい。

最初はやべえ奴だなあって思いながら読んでるいると、気がついたらチナスキー・ラブみたいな気持ちに陥っているから摩訶不思議。

チナスキーに惚れてしまう要素はたくさんあるが、いつも誰かに媚びない、へつらわない、簡単に曲げない、っていう姿勢が魅力的なのと同時に、とても彼の孤独に立ち向かう姿勢がかっこいいのだと思う。

本当はもっとうまく生きたらいいのに、と思ったりもするが、そんな孤独を怖れない彼の姿が自分はすごい好きなのだろう。

しかも、チナスキーは楽な方に逃げない。表面的には誰よりも不誠実ではあるが、今の世の中からしたら、実は誰よりも信頼できる男なのではないか。

めちゃくちゃどうしようもなくてしょうもない、ろくでもない男ではあるのだが、真の男らしい男の魅力をあわせもつ、チナスキーの魅力が詰まった作品だ。

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